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くらやみダンスのこれからと、支援のおねがい

 みなさま、お世話になっております。くらやみダンス主宰の岡本セキユです。

 既報の通り、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて本公演『くらやみダンスの宝島』福井・東京の全日程を中止させていただきました。それに伴い、みなさまに支援をお願いしたいと思っています。

 

 でもその前に、私が今、主宰として考えていることを伝えさせてください。

 長くて恐縮ですが、一読いただけると幸いです。

 

【1】公演中止の経緯

【2】これからのこと

【3】支援のおねがい

 

 

【1】公演中止の経緯

 

 改めて、今回の公演を楽しみにしてくださっていたみなさまには本当に申し訳ありませんでした。

 ご存知の通り、すでにたくさんの演劇公演がやむなく同様の判断に至っています。

 私たちは比較的早い時期に中止を発表したにも関わらず、その後のおよそ三週間、具体的なことをあまり発信できていませんでした。その点も、申し訳なく思います。

 

 中止の経緯について説明させてください。

 

 2月19日(水)、福井テレビの方から電話をいただきました。内容は「感染拡大を危惧し、イベント開催の是非を検討します」とのことでした。福井公演については福井テレビ様が主催元ですので、私たちとしては判断を待ちつつ、必要な対策や演出の変更が可能である旨を伝えました。

 2月21日(金)、ふたたび福井テレビ様との打ち合わせで「中止の方向でほぼ固まった」と告げられました。この段階で、座組の関係者全員に状況を報告しました。

 2月22日(土)午前、劇団員の会議で東京公演の対応について話し合いました。

 東京公演の劇場でも閉館が検討されているとの情報もあり、さらに今後どのような事態になるか予想できない中でさまざまな意見がありました。しかし、最終的にはおおむね全員が一致する形で「あくまで作品の発表に拘り、より実現可能性の高い『映像での配信』を目指す」ことを劇団の方針としました。

 同日午後、客演の出演者やスタッフを交えて全体の話し合い。

 上記の方針を伝え、意見を聞きました。議論を通して意見が変わる人もいました。最後に私の判断として、午前中の方針を変え、映像配信は行わず、全公演を中止することを固めました。同時に、近い将来に今作は必ず上演するとの意思も確認しました。

 その後、話し合いに参加できなかった関係者に個別に方針を伝えて意見を聞いた上、全員の確認が取れた翌23日(日)夕方、正式に中止を決定しました。

 みなさまへの発表は、その数時間後に行いました。

 

 以上がおおまかな経緯です。

 当時はまだ全国的にイベント自粛の波が起きておらず、演劇公演の中止もほとんど伝え聞かない時期でもあり、私含めて多くの関係者が考えをまとめきれない部分もあったかと思います。

 参考事例に乏しい中で、私が主宰として守りたかったのは作品そのものを発表することよりも、「座組の総意としての作品」を発表することです。

 すなわち、関係者全員の前向きな気持ちのもとで発表する作品にこそ、拘るべきものがありました。

 

 さまざまな意見があると思います。それでも、個々人の気持ちが不安定な状態で作品製作を続けるべきではないという判断を理解し、応援してくださった関係各位やお客様に感謝しています。

 

 

【2】これからのこと

 

 こうした発信が遅れた理由はふたつあります。

 一つは事務的な都合です。福井テレビ様の関連イベントはほかにも多数あり、混乱を避けるために各所の調整を待つ必要がありました。

 二つ目は、実際はこれが大きいのですが、私たち劇団員の気持ちの問題です。あるいは、主宰である私自身の意思がしばらく固まらなかった、とも言えます。

 

 公演中止を決めた直後から、負債の処理など必要な対応には動いてきました。詳しくは後述しますが、早い段階の中止とはいえ、私たちのような小所帯にとっては大がかりなツアー公演でしたから、一定の赤字が発生したことは事実です。そこで、応援してくださるみなさまに支援をお願いしたいと考えました。

 しかし、そのためにはどうしてもまず明確にしなければならないことがあります。それは、支援をいただいたあと くらやみダンス はこれからどうするのか―

 

 当然といえば当然です。だけど、私たちにとって(あるいは私にとって)それはとても難しく、そう易々と答えの出るテーマではありません。

 この機を逃してこれから、果たして自分が作品を発表するための熱量を維持し続けられるだろうか。正直に言って、とても不安でした。

 熱量とかいうとカッコつけたかんじになっちゃいますが、要は、なんとしても発表したいと拘り続けられるかどうか。しんどいことからとことん逃げる性分なので。

 

 今回は私たちにとって三年ぶりの本公演となる予定でした。そのあたりの詳しいいきさつは別途文章にしていますので、お暇な方はよかったら読んでみてください。こっちも長くて申し訳ないんですが……

 活動休止を経て、それぞれに異なる思いを抱えながら今ふたたび集まったこと、その文脈に私はおもしろさを感じていましたし、そんな舞台の下の情念にこそくらやみダンスの核はあると思っています。

 だから、もしかすると私は、演劇作品そのものにはあまり拘泥していないのかもしれません。くらやみダンスの目的は、私が、お客様も巻き込んだ私たちが、演劇でドキドキし続けることです。

 

 「たとえば一年後に延期公演をやるとして、それまでみんなが闘い続けられるか、申し訳ないけどちょっと自信がないです」

 

 今後のスケジュールを話し合う会議の場で劇団員に伝えました。主宰として良い振る舞いではないかもしれないと思いましたが、ここはもう個人の気持ちでいいだろうと、勝手にわりきりました。申し訳ないけど、熱量のない闘いがおもしろくなるとは思えない。

 

 「じゃあ、闘わなくてもいいんじゃないか」

 「いやいやそれは…」

 「いや、いったん聞いて」

 「はい」

 「たしかにこれまでは、闘うことが大事だったかもしれないけど、たまたま三年ぶりに集まって、演劇をやろうと言ってここまでやってきて、もしかしたらこれからは味方としてやっていくのでもいいのかもしれない」

 「それは、大丈夫ですか?」

 「大丈夫かはわからないけど、ただ俺はこの作品を上演したい。その後は、よくわからない」

 「そうですか」

 

 その後もいくつかのやり取りがありました。実際にはもっと曖昧で中途半端な会話でしたが、そこは少し美化しちゃっているでしょう。

 私の不安そのものはあまり解消されていないのかもしれませんが、くらやみダンスという場がこれからもドキドキできる場であること、関わる人や観に来てくれる人がみんなで作る くらやみダンスの文脈にドキドキできることが私の信じるおもしろさだと思いました。

 これは学生時代からずっと近しい人には言っていますが、私はくらやみダンスにおいては常に「作品」ではなく「公演」を作ってきたつもりです。言い換えれば、くらやみダンスの文脈を含めて作品だと思っています。

 今回のことは残念です。しかし、だからこそ、この作品は未だ製作の途上です。今もまだ創作は続いています。起承転結の転の部分です。

 この気付きから、自分の熱量はまだ信じられると思いました。そういうわけですから、くらやみダンスは必ず近いうちにこの作品を上演します。目指すところは異なれど、できればまた座組を集めたいと思います。

 

 作品に期待してくださっているみなさまには、直接関係のないことかもしれません。本来こういう文章はもっと簡潔に、明快に、みなさまの関心に向けて語るべきかもしれません。不必要にエモーショナルな言葉は排除すべきかもしれません。

 だけど、申し訳ありません。くらやみダンスという劇団はどうしても、エモーショナルを無視して動くことはできないと、私は思います。

 長くて失礼しました。以上のような気持ちでもって、今後の活動のためにみなさまに支援をお願いさせていただきたいです。

 

 

【3】支援のおねがい

 

 今回の公演中止によって、劇団にはおよそ70万円程度の赤字が発生しました。現在は福井テレビ様とも協議しながら、これら負債の処理を進めています。

 お陰さまで、経費の支払いや関係者へのギャランティーの補償はおおよそ目処が立ちつつあります。しかし、今作をより万全の態勢で上演するために、みなさまにご支援をお願いさせてください。

 劇団の窓口にて、一口1000円から支援金を募っております。ご支援いただいた方にはささやかながらお礼をお送りさせていただきます。

 →受付期間は終了しました。ご支援誠にありがとうございました。

 公演は中止になりましたが、みなさまが応援してくださったお陰で、私たちはもう一度おもしろいことをやろうとドキドキすることができました。本当に感謝しています。

 必ず上演にこぎつけて、今度こそはみなさまと一緒にドキドキできる場をつくります。

 これからもどうか、くらやみダンスをよろしくお願いいたします。

​くらやみダンス主宰

岡本セキユ

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